一般社団法人あそびの庭(二宮町)

 さわやかに晴れた5月のある日、二宮町東京大学果樹園跡地(約3ヘクタール)にある「みらいはらっぱ」には、子どもたちの楽しそうな声が響きわたる。2021年11月から(一社)あそびの庭のメンバーがコンテナを改修した木の香り漂うコミュニティスペースをオープン。その名も「はらっぱベース」。だれでも来て、ごろーんとゆっくり本を読んだり、ボードゲームをしたり、畑で花を育てる…とか、やってみたいことをやってみられる場。

 代表の渡辺優子さん、事務局長の高砂庭子さん、理事の小野寺裕美さん、杉本かお里さんが、明るい日差しの中で元気に遊びまわったり、宿題をする子どもたちやお母さんたち、通りかかった近所の高齢の女性と楽しそうに言葉を交わしていました。


コンテナを改装した「はらっぱベース」の前で。子どもも大人もみんなで協力してひさしを張り、デッキをつくった。

左から渡辺さん、杉本さん、高砂さん、小野寺さん。

 

「あそび」で寛容な社会を

 

「あそびの庭」の設立メンバーは、その4人に広報担当の二宮尚広さんを加えた5人。

企業を退職し、二宮のプレーパークなどで活動していた渡辺さんは、「あそび」でもっと社会全体を寛容で豊かなまちにできないかとイメージを膨らませてはいたものの、あと一歩が踏み出せないでいた。そんな時に知人の紹介で二宮にUターンしてきたばかりの高砂さんに出会い、すぐに意気投合したことがこの活動の始まりになった。それまで一緒に地域活動をしていた仲間を誘い、2020年に任意団体を立ち上げ、2021年2月に一般社団法人を取得。


温かいまなざしの発信を大事にしたい

 

「あそびの庭」というコンセプトはあったものの、それをテーマにまちづくりにつなげること、どんな活動をつくりだすか、どんな言葉を紡ぎ出したらみんなに伝わるか、来る日も来る日も話し合った。遊びの本質は魂が喜ぶこと、遊びと学びは表裏一・・・子どもを真ん中に、大人の目線も変えていきたい、何もしない「ひま」を楽しむ余裕を持ちたい・・・自分自身の感覚に向き合い、体の奥底から出てくる言葉、温かいまなざしの発信を大事にしたいと思った。二宮町全体をよくしたい、本気で「あそぶ」ことを本気で考えている。

寝そべっても、宿題しても、木登りでも、

大声で叫んでも、走り回ってもなんでも大丈夫


何もないけどそれがいい

 

ここには何もないから新しい活動がどんどん生まれ、その相乗効果も出てきていると感じている。2020年秋に行った「あそびの庭キャンプ」は日帰りでも一泊でも参加でき、140人が参加。遠くに行かなくても近くで非日常が体験できる場として「満月を見る会」「きこりアクティビティ」等々の企画は大好評。「五感を使う」「あそび心ある暮らし」「地元の資源を活用」というあそびの庭ならではのキャンプスタイルを提案した。2021年は「春のにのみや暮らし市」「冬のにのみや暮らし市」を開催。マルシェとプレーパークを一体にし、子どもも大人も楽しめる企画には、2回で延べ82の出店、約400人が参加。そのほか、二宮町をもっと知る「大人の遠足」、コロナ禍の一斉休校時には、得意分野をもつ父ちゃんたちが立ち上がり、野外に出て算数、理科、国語、社会につながる内容を学ぶ「父ちゃんたちの課外授業」など、ユニークな活動が次々に。


まち全体で子どもの居場所をつくる

 

活動経費は「あそび人」という名の会員会費(1口1000円)、リサイクル品、農産物を介した寄付などから捻出している。(公財)かながわ生き活き市民基金の助成金で「はらっぱベース」の家賃をまかなえた。地に足をつけて活動し、少ないお金でもおおぜいの人が参加して子どもに循環するしくみをつくり、町全体で子どもの居場所をつくっていきたいと、口をそろえて語ってくれました。

いま、畑ではジャガイモが育っている