特定非営利活動法人 ひまわり

全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)

 2009年4月に「任意団体 よこすかひとり親サポーターズ・ひまわり」として活動を始め、2023年2月にNPO法人の認証を取り、横須賀市内で活動している。

同じような立場の人(ピアグループ)が集まり、つながることがお互いの支えにもなるということ、コロナ禍でより広範囲な困った人たち・若者への支援と政策提言をすすめている。

活動内容:・ひとり親家庭の生活支援講座・交流会(横須賀市委託事業、ひとり親家庭が抱える悩みを相談し合える場として交流会を年12回開催)・若者支援事業(食料・日用品等)・多様な学び支援プロジェクト~不登校・引きこもりのお子さんと親御さんの会~

・無料学習塾(協力:一社Teena Light)・年越しパックの配布

代表:佐藤智子さん

取材日:2023年7月10日

取材者:小林麻利子(神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会)、奥村まゆみ(NPO法人全員参加による地域未来創造機構)

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飾らない人柄、熱意・実行力がすごい。

理事長の佐藤智子さんにお話を伺った。


行政任せにせず、まずは自分たちでつながることをめざした・・・・・

 2008年保育園からの紹介で横須賀市が開催していたひとり親家庭交流会に参加した。行政担当者や議員は、困っていることやこういう制度があったらいいという話を聞いてくれたが、その意見が政策に反映されることにはなかなかならなかった。同時に、同じような立場の人たちが集まり、つながりを持って話をすることはお互いの支えにもなるという事に気づき、意気投合した仲間で、2009年4月に「よこすかひとり親サポーターズ・ひまわり」を立ち上げた。

 当事者の市民団体として、ひとり親同士が自由に話すことのできる交流会「おしゃべり広場」を始めた。徐々に規模も活動内容の幅も拡大し、2014年には横須賀市から「ひとり親家庭指導講座」と「交流会」事業を委託され、行政とひとり親家庭との橋渡しも担うようになった。

 その間、佐藤さんは自分の子どもへ関わる時間が必要となり、一時期活動を離れていたが、2020年4月活動に戻った。二代目代表になり、現在約200人の会員をまとめる。新たな取り組みとして食料支援や学習支援を開始した。 

 ひとり親交流会「ひとり親家庭で育った子どもたちの声を聴こう」

ひまわりのFacebookから転載


 横須賀市ひとり親交流会「クラフト&クリスマス会」

ひまわりのFacebookから転載

より広範囲の若者支援へ・・・・・・  

 市内コミュニティセンターで開催する交流会をはじめ、桜の名所や猿島に出かけたり、衣類や日用品をリサイクルしたり、クリスマス会を開いたりと、親子で楽しめるイベントを定期的に開催。アウトドア遊びを通して、気軽に子どもを預かり、相談できる仲間作りを目指し絆を深める。「ひとり親家庭指導講座」では、子どもの心の不安について取り上げたり、法の手続きや家計の悩みに対して弁護士などの専門家を招いて相談会を開いたり、心理、法律、経済など多角的な講座を開いている。

 活動をすすめるうちに、困っているのはひとり親とその子どもたちだけではなく、多種多様な問題を抱えている子どもや若者が多くいることに気づいた。より広範囲の若者支援へと活動を広げ、2023年2月NPO法人として認証、登記した。

 


「ひまわり」に参加して頼る力、頼られる力を付けてほしい・・・・・・・・

 一般社団法人Teena Light(様々な困難を抱える子どもたちの教育支援に取り組む非営利団体)の協力のもと無料学習塾を2023年9月から開催している(毎週月曜日、介護施設の協力を得て、デイサービス終了後の18:30~)。横須賀市は就学援助受給世帯の中学3年生を対象にNPO等に委託して学習支援事業を行っているが、学習習慣作りは小学生から必要だと思っている。早い段階での支援介入が必要なことから、自主事業として開始し、対象を小5~高校生(既卒生含む)と幅を広げて対応している。無料学習塾を始めたことで、新たな地域との連携づくりが進んでいる。 


「父子家庭交流会」(横須賀市ひとり親家庭指導講座)

ひまわりのFacebookから転載

「ひまわり」の存在意義はますます大きく・・・・・

  横須賀市の事業委託であるひとり親家庭の生活指導講座・交流会は大学生ボランティアスタッフが保育を中心に運営をサポートして開催している。他のスタッフや協力者は趣旨に賛同し、自ら手を挙げて活動をサポートしており、ブレーンチームメンバーで企画したり、専門的なスキルを持っている人に相談できる態勢はあるものの、現時点では理事長の佐藤さんが中心になって活動をすすめている。参加者それぞれの話を聞き、個別的な対応やさまざまな調整をしているが、次の調整役を担う人材を育てていくことが今後の課題だという。

 対象としているのはシングルマザーだけでなく、シングルファーザー、未婚・非婚ママ&プレママ、離婚協議中や別居中など、法的離婚前の人も含む。「ひまわり」の活動を支援する地元の企業、団体は20以上あり、助成金・補助金を受けているほか、継続して寄付をしてくれる個人も少なくない。


 とはいえ、未だにひとり親に対する偏見や、経済格差による教育や進学の格差も大きい。2023年度のジェンダーギャップ指数が世界146カ国中125位という日本。男女の賃金格差も大きい中で、シングルマザーの貧困率は5割を超えている。ひとり親世帯、特に母子世帯の貧困の問題は、未来を担う子どもたちの経済的のみならず、「人間関係の貧困」や「経験の貧困」にもつながる。社会全体の問題として貧困の連鎖を断ち切るための支援策は喫緊の課題だ。  そのため、「ひまわり」は個人ではどうにもできないことがある、現場を知る立場から伝えていくことが必要であると思い、国への政策提言が重要であると考え、シングルマザーサポート団体全国協議会の一員として、政策提言にも力を入れている。 "ひとり親"当事者団体としてスタートし、活動を広げている「ひまわり」の存在の意義はますます大きくなっている。        (小林麻利子)