子どもの育ち応援団

全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)

2014年5月相模原市緑区上九沢団地で設立

共働き、シングル世帯の増加や家庭環境の変化により、放課後や休日に「居場所のない」子供が増加している。地域コミュニティのつながりの低下により「地域が子供を育てる」ということが機能しなくなってきている。くすのき広場に集まる子どもを通じて、人が出会う。団地のコミュニティも育つことを目的とする。

代表:吉澤 肇さん

取材日:2023年月20日

取材者:桜井薫((公財)かながわ生き活き市民基金)、奥村まゆみ(NPO法人全員参加による地域未来創造機構)

代表の吉澤さん


1.設立の経緯「荒れたこどもたちに居場所を」・・・

 ・2010年9月、吉澤さんは相模原市営上九沢団地に引っ越してきて、2013年には民生委員、児童委員に。

 当時、団地内の中・高校生のいたずらや、破壊活動、敷地内オートバイ走行等無法状態。警察署にパトロール強化依頼、教育委員会・中学校校長・教職員への生徒指導の依頼、市の住宅課への陳情、住民の自警団(メンバーは70代)を組織しての夜間パトロールを行ったが効果がなく、各界の方の意見を聞く場を持つことにした。                          

・2014年 近隣の民生委員・児童委員・社会福祉協議会、若者サポートステーション所長 、フリーランスライター、北里大学助教授、大島小学校校長、市会議員等と数回議論をする。その中で、「地域が子どもを育てる、子どもと大人の交流の場を作る」ために、くすのき広場(子どもの居場所)を作ろうと意見が一致。同年5月団地内の「第1回親子清掃会」からスタートし、その後、団地住民、自治会、大島小学校PTA、法政大学学生が参加して、団地内多目的室にて、月2回、くすのき広場を開催することになった。

市営上九沢団地


くすのき広場のチラシ

2.主な活動内容・・・・・・・・・・・・・・・

1)くすのき広場 フリースペース (子どもの居場所) 2014年スタート

第1、3月曜日(学校のクラブ活動がない曜日) 15:30-18:30  無料 C棟多目的室

 ➤宿題をやった後には、何をして遊んでもいい。その後食事。大学生によるクリスマスイベント等も開催される。クリスマス会には100人位集まる。

 ➤広場利用者には名前を記入してもらうが、書けない子もいた。そこで学習支援の必要性を感じ、学習塾の開催につながる。

 

 


2)くすのき食堂 (こども食堂 食事の提供) 

2018年スタート

 ➤広場、学習塾の後に毎回開催 無料 年間オープン日40日以上。利用者1000人以上。

 ➤スタート時はおにぎりから、現在は焼肉、牛筋カレー、豚汁、炊き込みご飯など様々なメニューがある。

 ➤これまで7回、ピザーラからの70食分の寄付があった。大好評であった。

 ➤調理は婦人ボランティア 

 ➤食材の調達 無料にできるわけ

お米はカンパ、野菜は地元の家庭菜園から。お米は年間100㎏確保できる。フードバンク、フードコミュニティの利用。社協、市子ども支援課の応援、福祉団体や個人の寄付等

 ➤コロナ期はお弁当配布を行った。

写真はくすのき広場 | Facebookから転載


3)くすのき学習塾 (学習塾)

2019年からスタート 第2、4月曜日  無料

 ➤自学自習が基本。教職経験のボランティアや大学生中心に展開。5時過ぎから夕食。

 ➤当初、足し算もままならない子どもいたが、教職経験者の女性ボランティアが工夫した「たしざん一級博士」などの賞状を出すようにしたら、学習意欲が増す子が出てきた。


その他、「パンで朝食会」「パンで喫茶」を行ったが現在は休止している。

「パンで朝食会」は、市の子ども支援課からの打診を受け、地元オギノパンからの提供を受け、2018年に子どもの朝食支援として実施したが、参加が伸びず休止。

・市の子ども支援課からの打診を受け、2018年に月2回朝食支援にチャレンジしたが参加が伸びず休止。

・「パンで喫茶」高齢者のためにコーヒーとパンで朝食を開催。一人100円で早朝歓談は好評だった。朝食支援は一年やったが、ボランティア側が継続は難しいと判断し休止した。

 

写真はくすのき広場 | Facebookから転載


3.ヒアリング担当者の所感「継続は力なり」・・・・・・

 ・吉澤さんが大切にしていることは、信頼関係、幸福感、喜び、生きる楽しさです。そうした信念が伝わって、大ぜいの参加・協力が生まれ、子どもたちを育てられる地域(コミュニティ)がつくられてきました。

立ち上げ当初は皆無であったこども食堂は市内で40以上、無料学習塾は30以上。一般にこども食堂は貧困対策だけでなく、地域のふれあいやコミュニティの場であるという理解が広がることによって、善意の寄付等も増えてきている。

・荒れていた団地を立て直してきたという実績があっても、団地の住民は入れ替わっていくので、そのことを知らない人も増え、信頼関係は常に作り続けていかなくてはいけない。そんな大変さも含め、活動が10年間持続している。

後継者づくりという課題はあるが、行政や団地の人々との信頼関係という社会的資本の強みを生かしていってほしい。

(桜井薫)