特定非営利活動法人 街の家族

全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)

多様な世代の人が、それぞれ力を出し合って、日常生活に近い場所でつながりを作り、結果として暮らしやすい、安心・安全で子育てがしやすい街づくりを目指して2012年6月に「任意団体 街の家族」として活動開始

2020年8月にNPO法人の認証

活動内容:(A)「三世代交流」の中で取り組む1.食育事業と2.介護予防事業(①健康教室②ニコニコ健康クラブ)

(B)一時預かり事業・・・認可外保育施設として、一時預かり保育事業「まんまるーむ」

(C)不登校・行き渋りについて考える子どもの第3の居場所づくり事業

理事長 押久保美佐子さん

取材日:2023年8月4日

取材者:小林麻利子(神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会)、上田祐子(NPO法人ワーカーズ・コレクティブ協会)

押久保さんを真ん中に秋山さん()と磯島さん。ホッとできる実家がコンセプト


世代を超えた繋がりを再構築したい・・・・・・・・・

 当日、理事長の押久保美佐子さん、副理事長の磯島弥生さん、理事の秋山紀子さんに話を聞いた。

東日本大震災の後、小さい子どもがいるお母さんたちから、安心して子どもを外で遊ばせることができない、屋内で少人数でも活動できる場所がほしいという要望が聞こえてきたこと、また、大災害を経験して、災害時に必要なことは、住民の互助、地域の繋がりであることを確信していた。世代を超えた繋がりの再構築の必要性を感じ、なんとかしたいという想いが芽生えていたころに、自分の家を地域のために活かしたいと思っているオーナーに出会うことができたものの、その「場」をどう地域に有用なものにしていくのかは白紙状態。市民団体に対して伴走的な支援をしている NPO 法人横浜プランナーズネットワークのメンバーの方々の力を借りることができ、地域住民ともこの取組みを共有する手がかりになった。それがこの活動のビジョンや事業計画をもつことにもなり、その後の活動に生かされている。

子育て世代会員による手作りの壁画


お知らせボードもDIYで手作り

利用者から担い手へという循環が生まれている・・・・

  はじめに積極的に利用してくれるようになったのは、子育て支援関係で、地域に声をかけた乳幼児とその保護者で、「なんとなく気になる場所」 から声をかけられて行ってみたら「居心地よい場所」で継続的に訪れる親子になっていった。赤ちゃんがいる居場所は、親子の居場所、遊び場所、相談場所であると同時に、地域の高齢者のサロンといった役割や、新しい住民の孤立防止やシニア層の活躍の場ともなっている。

 何より、この10年の活動で、利用者から担い手になるという人材の循環が生まれた。秋山さんも夫も実家が遠方のため、子育て中の支援を受けられなかったが、「街の家族」の押久保さんを中心に人と場所が実家のような存在で、それがすごくありがたかった、その感謝の思いをつなげたいという思いで、いま関わっているという。

 

 


 まずは、経験値を活かしたベテランが動くことで、それに共感する若い世代を巻き込めるようになっていったことも運営していくためには重要な要素となった。

 2021年10月、認可外の一時預かり施設「まんまるーむ」を、「こどもの国」駅前の学童クラブと「街の家族」の2カ所展開でスタートした。いまその「まんまるーむ」事業の中心となっている磯島さんは、子どもがまだ小さい頃は「街の家族」の見守りあい相互保育でお世話になっていた利用者の一人だった。押久保さんのネットワークを使って学童クラブの空いている時間、その場所を使えるようになった経過がある。

 そのように「街の家族」は、「運営者側」と「利用者側」と分断されていないので、お互いに気配りができ、みんなの気持ちがこもっている居心地のよい場所になっている。 

☆8月カレンダー(最新のカレンダーはこちら


常に新しい人材発掘が課題・・・・・・・・・・・・・・

  学校でもない、家でもない、子どもの第 3 の居場所づくり、不登校気味の子(親)の安心できる居場所という今まで以上に必要とされる場づくりにも活動を広げた。「街の家族」がだれでも分け隔てなく受け入れてきた今までの経験を活かした取り組みだ。 

 ただ、現在の社会状況では、共働き家庭も増える中、若い世代には、個人の収入にもつながるような次の段階の仕組みが必要になってきているという。また、立ち上げたときの思いの継承と活動の継続はどんなアソシエーションでも課題になる。運営資金の確保や世代交代、人材育成も居場所を行っているところの共通の課題だが、若い世代は共感していても環境が変わる場合も多いので、常に新しい人材発掘が必要になる。それでも、「街の家族」は今後も利用者と担い手が循環しながら、共感しあい、たすけあい、地域に必要な活動につなげ「ホッとできる実家」を継続していくのではないかと感じた時間でした。

(小林麻利子)