全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)
2022年6月開始。秦野市の「かながわ共同会秦野精華園」、「大根地区新しいまちづくり運動推進委員会」、「みんなの食堂☆広畑」の3団体により運営。子どもの孤食対策や早寝・早起きの習慣づけなどを目的として、当初週1回の朝食提供(子ども食堂)を行っていたが、その後月1回の夕食提供を始め、子どもに限らず地域の高齢者や外国人等にも喜ばれている。
活動内容:こども食堂・コミュニティ食堂、フードドライブ・フードパントリー
代表:中山 勝さん(秦野精華園 総合施設長)
取材日:2023年7月18日
取材者名 佐野充((公社)神奈川県地方自治研究センター)、菅原順子(NPO法人全員参加による地域未来創造機構)
「ラパニス」とは古代ギリシャ語で「ダイコン(大根)」という意味。
地域の3つの団体の協力で始まった・・・・・・・
前田裕美さん(会計、調理担当)を訪ねて話を聞いた。
当日、会場になっている社会福祉法人かながわ共同会秦野精華園の建物に入ると、前田さんと4人ほどのボランティアメンバーが厨房で当日の夕食準備、翌朝の朝食の仕込みをしていた。ボランティアメンバーのほかに会場準備をしている施設の職員も2人、みんなで慌ただしく動いていた。今は週1回の朝食(水曜日)と月1回(第3火曜)の夕食提供をしている。MAXはボランティアの賄いも含めて1回20食をつくる。
前田さんは民生委員で、もともと現在とは違う場所で「みんなの食堂☆広畑」を行い、近隣の大学生や高校生が協力していた(それは現在も継続中)。
5~6年たったころ、かながわ共同会秦野精華園、大根地区新しいまちづくり運動推進委員会、「みんなの食堂☆広畑」の3つの団体の代表が集まり、2022年6月から秦野精華園の建物で週1回水曜日に朝食の提供をすることになった。そこで、「広畑」は別の代表にお任せし、南矢名地区に「みんなの食堂☆ラパニス」を立ち上げた。
大根中学校が近いので、子どもの孤食対策や早寝・早起きの習慣づけなどを考えていた。この場所はもともと障がいのある人の就労支援のためのカフェとして使われていたので、地域に貢献できることに使いたいというかながわ共同会の意向もあったという。
朝食提供を始めたものの、中学生は忙しく1人、2人と先生といっしょに来てくれたこともあったが続かず、半年しても子ども達の参加が殆ど無かったので、3団体で構成する役員会を召集。みんなの食堂☆広畑のように夕食なら参加しやすいのでは、とラパニスでも1回の夕食提供を開始することにした。夕食の方は、顔見知りになって来てくれるようになった子もいる。また、家族の参加が増えているので、夏休みの朝食提供への参加に繋がってくれないかと、期待しているという。
地域の活動ならではのネットワークを生かして・・・・
子どもたちの参加は少ないが、いま、朝食は、地域の高齢者や学生、若い女性、外国籍の人などに喜ばれている。いつも来るのに姿を見せなかった高齢者の安否を民生委員のネットワークで自宅まで確認したりしたこともある。
前田さんは、仕事や活動をしながら毎週水曜日の朝ごはん、月1回の夕食のメニューから会計までを一人でこなしている。フードバンクからの食品提供や近隣の農家からの野菜の寄付などの種類や量を確認しながら毎回のメニューを決めたり、会計も担ってフル回転している。食事作りのボランティアに参加している人は10人(現在は9人)。中にはかつて食堂をやっていた85歳の人もラパニスまで歩いて来てみんなと話ができることを楽しみにしているという。この活動がスタッフの元気のもとになっている。
前田さんの熱意と、それに賛同する仲間の存在、地域の協力、施設の思いがマッチして活動が成り立っている。食の提供が、地域で顔見知りを増やし、つながりをつくっていく一歩になるという活動事例だった。
(菅原順子)
みんなの食堂☆ラパニスは、社会福祉法人かながわ共同会秦野精華園の建物の一角にある。