全員参加による地域未来創造機構では2025年度に第2期アソシエーション活動実態調査として、第2期アソシエーション活動実態調査として、WEBアンケートを行うとともに、20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)
店主:大西裕太
設立年月:2022年
設立の目的:○本をきっかけに人と話をしたり、新しい人とつながることで、心の中を整理できたり、前を向くきっかけをもらったりできる場所、生き方や働き方に迷った人がひと休みできる「本を通じて、安らぎを感じられる居場所」づくり。
○「とまり木」という名称に込めた思いは、渡り鳥が休んで、また飛び立っていくとまり木のような、そんな場所であること。
主な活動内容:一箱オーナー制の本屋
オーナーは、店番、イベント、ワークショップなどの企画を実施し、企画の収入を得ることができる。
取材日:2025年6月26日
取材者:木村満里子(市民連帯経済つながるかながわ)、菅原順子(全員参加による地域未来創造機構)
画像はホームページ
茅ヶ崎駅北口からまっすぐ歩いて15分ほど。レトロな木の引き戸と藍色の暖簾が迎えてくれる。「とまり木」の店内に入ると、木の本棚や使い込んだ木材でつくられたテーブルや椅子、上がり框のある畳スペースや小物などが調和し、懐かしくほっとする雰囲気を醸し出している。店主の大西裕太さん(みんなから“ジミー”と呼ばれている)に話を聞いた。
人と人が話せる場と「シェア本屋」の組み合わせ
大西さんは経理担当の会社員だった時、一日誰とも話をしない日が続き、そのうち不眠、うつの症状が出たことから休職。その間に読書や自己分析をしながら自らの生き方を見つめなおすことができたという。人とのコミュニケーションのリハビリが必要だと思っていたが、病院は行く気にならず、たまたまチガラボ※でやっていた「マインドフルネスカフェ」に行ってみたのがきっかけで、チガラボに関わるようになった。
その後退職し、どうするか迷っていた時に清水謙さんから「シェア本屋」という形があることを聞き、いろいろなところを見に行った。「シェア本屋」はまちづくりの装置なので、店主の「色」を出しやすいという特徴があると思った。逆に「シェア本屋」をやることの「価値」は何なのかということが明確でなければただの本屋になってしまう。リアルで人と話せる場をつくりたいということと、「シェア本屋」が上手く組みあわせられるのではないかと思って「とまり木」を開いた。
※チガラボ:茅ヶ崎市で清水謙さんが主宰した人のつながりから新しい“たくらみ”が生まれるコミュニティ。定期的なイベント・ワークショップでの学びと交流から、何かやりたい人、すでに実践している人、応援したい人がつながり、一歩を踏み出すことを応援してきた。2024年4月に終了。
「とまり木」の自己資金だけでオーナーと共同運営
33センチ四方に区切られた箱型(3,000円/月)の棚に、それぞれ好きな本(新品でも本屋で買ってきた瞬間に古本になる)を置いて、値札とメッセージをつけ、それが売れたら本人の収入になる。「とまり木」の取り分はなし。一箱3,000円で「とまり木」全体の共同オーナーとなり、オーナー会議に参加して意見を行ったり提案したり、運営に参加することができる。現在67~68人いるオーナーは、「とまり木」を使ってイベントやワークショップなどを行うことができる。その収入はオーナー本人に入る。店主の代わりにお店番に立つこともできる。イベントのカレンダーは毎日いっぱいの予定が記入されていた。
本の委託販売するために「書籍商」、カフェでコーヒーやおにぎりを提供するために飲食業の届けを出している。ヒアリング当日もオーナーの一人が「もりの風」というコーヒーショップを開店していて、美味しいコーヒーをいただいた。
当初は大西さんの貯金を取り崩すことからスタートしたが、今はここの収入(本棚)だけで回っている。補助金・助成金もなく、自己資金のみ。合同会社だが、大西さん個人の報酬はゼロ。
オーナーは「とまり木」でお店番をやり、それを助走期間として「とまり木」を卒業し、次に自分で事業を始めるときには不安なく始められるのだという。
画像はホームページから転載
街に「心の安全地帯になる居場所」を増やしたい
一箱オーナーが、本棚に本を並べると個性が出ているのを意外と本人は気づかなかったりするが、それが言葉にしない「心の対話」かなと思うと大西さん。ここに本棚を持っていた人が今年2月から新しいお店を開いた。そうやってまちに「心の安全地帯になる居場所」が広がっていくといいという。「コミュニティはずっと同じメンバーだとどんどん内輪になっていくので」と、積極的に「とまり木」卒業を推奨する。誰か抜けるとまた誰かが入ってくる。自然と人の循環ができてきている。ただ、やみくもにオーナーを集めることはしない。「とまり木」が大事にしていることを伝えていったん持ち帰ってもらい、その上で「こういう使い方をしたい」という意思があればオーナーになってもらうという。
人のつながりがセーフティネットになる
「とまり木」とは直接関係はしないが、現在、茅ヶ崎市市民活動推進基金(愛称:市民活動げんき基金)を活用してプロジェクトが進行中だという。「居場所をつくりたいが、場所確保などの面で課題のある方も多い。建物の内覧や、3年分の事業計画などのカベがあるが、とまり木をつくるときには人のつながりでいろんな人に助けてもらった。伴走できたらいいと思う。」
1年間、空き家活用にはどういう連携が必要なのか、空き家オーナーへのヒアリングを行っている。オーナーに共通するのは、事例がないと空き家の活用イメージができないこと。そのため、なんと大西さん自身が空き家所有者になることも考えているという。「うつで休職した時が自分の生き方・暮らし方を見つめなおす期間になった。人のつながりができたので助けてもらえる安心感がある。身構えなくなった。」というが、明るく笑いながら飄々とけっこうたいへんそうなことをやってしまう36歳の若者(すでにお父さん)に、かなり人生経験を積んできた聞き手の2人ともが驚きを隠せない。何より人のつながりがお金で買えないセーフティネットなんだということを実感する時間でした。(すがはらじゅんこ)
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