全員参加による地域未来創造機構では2025年度にWEBアンケートを行うとともに、20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)
相模原みのり塾は2回目の掲載です。1回目はこちら 相模原みのり塾 - NPO法人全員参加による地域未来創造機構
代表:小布施実穂子
設立年月:2016年5月
設立の目的:「家庭の経済格差を教育格差にしない社会を実現すること 」 すべての子どもたちが、望めば学ぶ機会を手にできる社会であってほしいという思い。
貧困の連鎖から抜け出る一歩のために勉強したいという気持ちに応えるのは大人の役割。高校進学はその大事な一歩。その一端を担っていきたい。
主な活動内容:中学生の無料学習塾
●授業は1対1の個別学習なので、気になるところもどんどん質問できます
●これまでの学年の内容がわからなくても大丈夫。さかのぼり学習にも対応しています
●高校受験対応もバッチリ!夏期講習・冬期講習も実施しています
●教科の学習に加え、さまざまな体験ができる「創造学習」を実施しています
取材日:2025年6月22日
取材者:矢野克子(生活クラブ生協神奈川)、菅原順子(全員参加による地域未来創造機構)
画像はホームページ
6月の日曜日の午後1時から、JR橋本駅前にあるソレイユさがみ(男女共同参画推進センター)でみのり塾の授業が始まっていました。その一角で代表の小布施実穂子さん、副代表の山口幸大さんにお話を伺いました。
設立―すべての子どもたちが、望めば学ぶ機会を手にできる社会であってほしいという思い
日ごろからずっと、勉強したいと思っている子が経済的な理由で理解する機会もないまま放っておかれるのはおかしいと思っていたと小布施さん。東日本大震災をきっかけに、勉強したくてもできない環境にいる子どもが身近にもいるのではないかと思い、勉強を教えるボランティアをやってみようと思った。
当時、相模原には一つも無料塾がなく、八王子の「つばめ塾」に関わることで、経験を積んでいく。でも、3年たっても相模原には無料塾はできず、勉強したいという子どもの声に応えようと2016年に相模原で初めての無料塾を立ち上げた。
小布施さん(左)と山口さん
JAXA相模原キャンパス社会見学(2024.11)
画像はブログから
みのり塾は自分を肯定してくれる大人と出会えるアナザープレイス
みのり塾は、中1から中3までおよそ30名が通い、学校の授業の補習から、定期テスト対策、高校受験に向けての夏期講習&冬期講習、それぞれの志望校に合わせた学習指導まで、生徒たちが塾に通うならここまでしてくれるといいなと思う内容を実現できるよう、日々、運営スタッフ、講師、教室担当みんなで知恵を絞っているという。無料だから、ボランティアだからできない…ということにはしたくないという強い思いがある。これまで100名以上の生徒を送り出し、2024年度は18名の子どもたちが全員高校に進学。
学校で取りこぼされている子がいたらなんとか情報を届けたいと思うし、学校や教育委員会と情報交換できる場があって、みんなで協力して子どもを取り巻く環境をよくしていきたいと思うが、個人情報の観点からも難しい。それでも今の学校の状況などを知るため、不登校の親の会に参加してお話をうかがったり、みのり塾生徒の保護者にも学校の対応などについて聞きとったりしている。
「行政は、それなりにやってくれてはいるが、困っていても子ども自身は声をあげられない。子どものために大人が“何かしよう”と変わっていかないといけないと思う」と小布施さんは強調する。
山口さんも「活動する中で“肯定してくれる大人がいる”ことが大事と気づいた。親は子どもが50点を取ったら55点を求めてしまう、それは責任があるため仕方がないこと。だが、私たちは責任が少ないため50点を率直に褒めることができる。“無責任な大人が無条件に子どもを肯定する”。そういう役割の、家庭や学校とは違うアナザープレイスとして活動していきたい」と。
定例授業の様子(年間50回以上)1対1の対面で行う。
画像はブログから
創造学習「暗記術と記憶術」より
画像はブログから
寄付金で運営できるようにしていきたい
寄付や民間団体からの補助金・助成金を募って運営している(会場費、教材費など)。ただ、子どもたちがみのり塾に通う交通費や、模擬試験代、卒業する時の奨学金・記念品代には助成金は使えないので寄付金を充てるしかないという。行政より多少の便宜供与はあるが、毎回の会場の確保も大きな課題。小布施さんは「使途制限がない寄付金でほとんどを賄えるようにしたいがなかなか難しい。行政や社協との連携を強化し認知度を高めたい」と話す。
ヒアリング担当者の所感
小布施さんに最初に出会ったのは、みのり塾を設立して間もない2017年。当時、無我夢中でみのり塾を運営している小布施さんに驚いた。
今回10年目を迎えたみのり塾へ久しぶりにお邪魔して当時のパワフルな小布施さんが蘇った。全く変わらない小布施さんと活動に対する心意気に賛同し運営に加わった山口さんが出迎えてくれた。
みのり塾の活動を継続して来たことへのリスペクトはもちろんだが、ボランティア講師や運営スタッフを増やしてきたこと、何より100名以上の生徒を高校受験合格に導き、送り出してきたこと、今年も18名の子どもたちが全員高校に合格したことは、子どもたち一人ひとりに寄り添った証とも言える。
仕事をしながら仕事の合間の平日の夜にスタッフで打ち合わせをして毎週日曜日の午後に塾を開くのは、並大抵ではない。子どもたちを取り巻く課題解決やその背景にある社会に対するメッセージがエネルギーとなっているのだと取材を通して感じた。子どもにとって楽しく過ごせる場には、安心して見守ってくれる信頼できる大人の存在が不可欠であり、家でも学校でもないアナザープレイスの存在が必要だと話すふたりに感銘を受けた。さらに「生徒が頑張っている姿を見ると自分も頑張らないとと思う」と話す。
今回の取材で、少子高齢化が進む日本社会で一部の民間団体に任せるだけでなく、子どもたちを地域の宝として地域全体で大事に育てていけるような風土をつくっていくことが必要ではないか、地域資源であるヒト・モノ・カネを循環させる取り組みが必要だと考えさせられた。 (やのかつこ)
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