コミバス市民の会

 全員参加による地域未来創造機構では2025年度にWEBアンケートを行うとともに、20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)

代表:(共同代表)入江勝通、砂田正子、山田平保

設立年月:2006年7月

設立の目的:横浜市港北南部地区でのコミュニティバスの運行を軸に、地域住民の移動の自由を拡大し、外出支援を強め、地区の活性化とまちづくりに寄与する。コミュニティバス運行のために調査・研究などのほか、市民、団体、企業及び行政に対して啓発、協力、協働などの働きかけを行う。

主な活動内容:・菊名おでかけバスの定期運行、臨時号、送迎

・地域の歴史を知る地域探訪会、会員交流のための「さろん」、研修・学習会の開催

・会報「コミバスだより」の発行

取材日:2025年6月19日

取材者:桜井 薫 (かながわ生き活き市民基金)  兼清 明 (全員参加による地域未来創造機構)

画像はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス



菊名おでかけバスのはじまり

横浜市港北区錦が丘地区は、駅近であるが丘陵地にあるため全域で坂道が多く道路も狭く、住民の高齢化が進むにつれて日々の買い物や通院などが困難になるという問題が顕在化してきていた。一方、コミバス市民の会の前身となる「よこはま環境フォーラム」は環境問題を考える中で地域の移動手段としてコミュニティバスに着目。2004年から錦が丘町内会のメンバーと連携し試運行に取り組んだ。自分たちで調査してルートを決め、ワゴン車を借りて試運行開始。実施のたびに利用者が増加した。2008年の4回目は、横浜市市営バス2台を運転手付きで借りての実証実験。運行ルートも2つに増やし、3日間で1,348人の利用があった。しかし、構想した自治体や専門事業者委託では全く採算が取れないこと、道の狭い住宅地の中に大型バスが入れない等の課題が明らかになった。

画像はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス


2022年度総会

写真はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス

「自分たちで車を手配して、自分たちで運転し運行しよう」 住民による運営・運行を決意

 運行断念の判断が迫られたが、高齢化が進む錦が丘地区の住民から運行実現への強い要望(署名)があった。そこで、地域ニーズにあったコミュニティバスの運行ができないかと検討を重ね、「住民による運営・運行」へと方針を転換することに決定。市民主体の地域交通づくりであり、買い物などの日常の足として実現しようという方向に舵を切った。 


菊名おでかけバスの定期運行スタート

 2011年1月、会員制運行の菊名おでかけバス定期運行(週1)がスタートした。利用者の要望を参考に工夫を重ね、15年目となる2025年5月現在は、毎週火曜日に菊名駅西口を起点とし、錦が丘や富士塚の住宅街を細かく経由して、菊名池前のスーパー「OK妙蓮寺店」で折り返し、今度は菊名駅東口から旧綱島街道と綱島街道経由で、港北公会堂(区役所隣)や港北図書館、サミットストア菊名店を経由して菊名駅西口に戻ってくる一周約9キロほどのルートを朝9時から7回走っている。主な利用は買い物・公共施設・医療施設へのアクセス等、子育て世代の利用もある。道路運送上のバスではないため、運賃制ではなく会員制、1000円の年会費でその年度内は何度でも利用できる。

写真はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス


写真はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス

住民が本気になればここまでできるという先進事例に

 当初は会員所有の普通車を使っていたが、乗客が2名以上になると定員をオーバーしてしまうため、同乗している介助者が一旦車を降りて、利用者が降りるバス停まで走って向かい、そこで乗り降りを手伝い、荷物を運び出してから再び乗車するというような苦労もあった。神奈川新聞の報道をきっかけに地域の方から8人乗りのワゴン車を借用して、初年度年間のべ388人だった利用者も、2019年度には過去最多となる年間延べ1390人の利用まで拡大。コロナ禍の影響で2020年度は799人と減少するが、その後、じわじわと回復し、2024年度はコロナ禍前に迫る1316人まで回復している。


運転ボランティアと車両の確保が課題

 運転ボランティアは年齢制限(76才まで)を設けているため、初期に運転を担っていた方は大半が「卒業」となる。60代のボランティアの確保が課題となっている。対策としては、口コミや広報(HP, 会報「コミバスだより」)で募集しており、ラジオ・TV・新聞からの取材依頼があれば積極的に活用している。また、安心して運転ボランティアに参加できるように運行体制を整備している。(運転マニュアルの作成利用者対応は添乗員が行い運転に集中できる態勢づくり。講習会や追加研修の実施、ドライブレコーダー設置など)、僅かな活動費を支給しているがそれをアピールしてのお誘いはしていない) 現在は、少しずつ入れ替わり、ぎりぎり必要な人数が集まっている。

 車両の確保については、外出移動支援のニーズは各地で高まっているため、こうした活動が各地に広がるように、車両を共同で使用できる仕組みが必要である。併せて、ボランティアについては現在、横浜市のボランティア保険があるが、自家用車をボランティアに使用する際の保険のバックアップついて行政の支援が必要と考え、働きかけていきたいと考えている。


各乗車場にはこのような案内板が設置されています

写真はホームページから転載 コミバス市民の会・菊名おでかけバス 

ヒアリング担当者の所感

 菊名おでかけバスは住民主体の運営・運行が先駆的な取り組みとして、視察や取材依頼が途切れない。しかし、始めた頃は交通政策(交通事業)に市民が手を出すなんてと言われたこともあったそうだ。試運行で課題が明らかになり頓挫しそうになった時に、「早くしないと死んじゃうよ」という名文句でバス実現を牽引したという錦が丘の方々のどうしてもこの地域にコミバスが必要であるという熱意が多くの市民を動かした。合言葉の「コミュニティがコミュニティバスをつくる。コミュニティバスがコミュニティをつくる」ここから生まれたとのこと。一方で、できる範囲で活動し無理はしないという堅実さも持っている。運行日をもっと増やしてほしいという声はもちろんあるが、自分たちの力量を見極めているとのこと。15年続いている秘訣はここにあるのではないか。この間、地域の人のみならず異業種人たち (芸術家、UTVかながわのプロデューサー等)も集まってきて、非常に楽しいとのこと。様々な課題はあるが何とかなるさと思えるという、それは地域で培ってきたつながりが土台となった言葉であると推察する。地域のライフラインと呼ばれるようになった菊名おでかけバスが次世代に繋がっていくことを期待したい。   

             (さくらいかおる)


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