ずし子ども0円食堂

全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)

2016年に逗子市で立ち上げ。

子どもの孤食や欠食を補う活動をめざすが、それは地域の問題の一側面でもあり、家庭が孤立せず、近所に相談できる環境、地域全体で一緒に考えていける環境があれば、貧困や孤食などの問題も、もっと少なくなるはずという考えから、子どもや母親だけでなく、高齢者もともに過ごすことのできる居場所作りも活動の目的とするようになった。

代表:草栁ゆきゑさん

取材日:2023年7月8日

取材者:大杉恭子(福祉クラブ生協)、菅原順子(NPO法人全員参加による地域未来創造機)

代表の草栁ゆきゑさん


地域全体で一緒に考えていける環境が必要と・・・

  逗子市沼間公民館が開く朝9時から調理室で35合のごはんを炊き、さまざまな食材を使って色とりどりのお弁当をつくる。その日は9人のスタッフ一人ひとりが必要な仕事をてきぱきとこなしながらも笑い声が絶えなかった。

 長年親の介護等で家からあまり出られなかったというスタッフの一人は、1年ほど前から参加し「ここに来て働いて家に戻ると元気になる、それがうれしい」と話した。他の団体では中心になって活動するメンバーが不足しているという声がよく聞かれるが、ずし子ども0円食堂はみんなが積極的に参加しているように見えた。この活動の意義(食の重要性、地域の子どもたちを見守る意味)がメンバーに共有されているという感想をもった。


 その日は逗子小学校区での昼食弁当+企業からの寄付のピザを配布。スタッフの検食分を含め、61食。申込数は50、取りに来なかった人はいない。逗子市内には、「0円食堂」が活動する逗子・池子・沼間の小学校区のほかに、小坪と久木小学校区があり、全5小学校区でそれぞれ「子ども食堂」の活動が行われている。


ずし子ども0円食堂は、当初から子どもの孤食や欠食を補う活動をめざしているが、「行政のお世話になる」ことを恥ずかしいと感じている家庭も多いため、その目的だけを取り上げることができない現状がある。また、子どもの問題は地域の問題の一側面でもあり、一つの家庭が孤立せず、近所に相談できる環境、地域全体で一緒に考えていける環境があれば、貧困や孤食などの問題も、もっと少なくなるはずという考えから、子どもや母親だけでなく、高齢者もともに過ごすことのできる居場所作り、そんなことも活動の目的とするようになった。すぐに解決できることではないが、その都度改めて、現状と、今できる最善は何か?を確認し合い、新たにスタートを切り続けているという。 

 

 代表の草栁ゆきゑさんへのスタッフメンバーの信頼は篤い。

 スタッフの一人飯野幸さんはこの活動の意味について考えをまとめ頻繁に発信する広報(Facebook)を担う。


「愛情いっぱいの温かいご飯で、子どもと地域に笑顔を届けます♪」に込められた思い・・・・・・・・

  代表の草栁さんは幼稚園や保育園等で子どもたちの食の現状に接することが多く、民生委員・主任児童委員も12年間続けてきたが、その活動は何か受け身的な感じがして違和感があったという。「食でつくる健康づくり」のボランティア活動を30年間やってきたことなどがあることから、子ども食堂を立ち上げようと思った。その頃まだ、子ども食堂は少なく、何かあったときの責任問題になると逗子市も保健所も抵抗は大きかったが、何とか主任児童委員や他の仲間6人とともに2016年に始めることができた。当初は逗子小学校、池子小学校、沼間小学校の3か所でそれぞれ集まってみんなでカレーライスを食べる活動だったが、コロナ禍以降はお弁当配布になった。来年1月からまた集まって食べる食堂を開始する予定だ。


「子どもの幸せを思うとき、母親の笑顔や安心感というのは、とても大きな要素で、特に食に困っているわけではないけれど、地域になじめず孤立していたり、困りごとを相談できずに悶々としていたり、仕事と子育ての両立で疲れてしまっている人は本当に多い。そんな方々に、ひと月のうちのほんの1食だけでも楽しみの時間ができれば、それも価値のあることなのではないかと思っている」とメンバーの一人はいう。

 中心になるスタッフメンバーは13人。ボランティア登録は70人くらいになる。月3回のお弁当配布の活動のほかに月1回の定例会ではスタッフ13人が集まり、活動の計画やメニューの検討、気になる子どもや親子のことを共有し、見守る必要性を確認したりしている。13人のうち、6人が主任児童委員なのでさまざまな地域のニーズを把握しやすい。また、みんな同じ地域に住む人同士なので、活動日以外でも子どもと顔を合わせることがよくあり、「0円のおばちゃん」と声を掛けられる。

 そうやって地域で子どもを見守り、育てるということを実践する。「たった一人の幸せのために力を尽くせる社会をめざしたい」という。

 

(菅原順子)

逗子小でお弁当の配布