川崎市中原区にある築50年の空き家をリフォームし、2020年に開所した地域交流の場「くるみのおうち」を訪問して、社会福祉士で認定NPO法人くるみ理事長の太田修嗣さんからお話を伺った。(取材:上田 祐子)
「くるみのおうち」を訪問したのは日曜日の午前中。理事長の太田さんが副理事長礒さんと一緒に笑顔で出迎えてくれた。早速「ルームツアーをしましょう。」と太田さん。DIYされた壁には耐震補強でたくさんの釘の跡があり、仲間で塗った漆喰の壁を見学。キッチンでは「ここで私がケーキを作って、みんなでカフェタイムを楽しんでます。」と案内していただいた。
太田修嗣さん
自分でできることをしようと思った
太田さんは、2008年ドイツ赴任から帰国後、離婚。川崎で父子2人暮らしをしながら、フルタイムで働いて、自閉症スペクトラムのお子さんの子育てする生活が始まった。当時、小学校2年生だったお子さんは特別支援学級に転入。次第に親子とも周囲から孤立し、周囲とのトラブルも発生。相談相手がいない状況だった。学校でのトラブルを契機に教員との話し合い、他の保護者との交流を通して「トラブルの原因はただ排除すればよいのでなく、関係する人たちが一緒に考え、自分達で出来ることをすることが大事だと実感した」という。
息子さんは成長と共に一人で行動することが増え、地域の方からは迷惑行為ととられかねない行動をとるようになったという。こうした行動を回避するためには付き添いが必要だ。福祉制度を調べてみると、通所・移動支援制度はあるが、ヘルパーさんが圧倒的に不足している。子どものすべての事に親が対応する事は困難だった。
法人の設立
2014年2月、自閉症に代表される多様な特性のある本人と親の支援を通してインクルーシブな社会づくりを目指すための法人を設立。法人名の「来未(くるみ)」は「明るい未来はきっと来る(来)」+「未(可能性・これから)」を表している。
ライフスキル事業:野外体験活動-黒川野外活動センターでのおもちつき
多くの協力者・支援者とDIYして「くるみのおうち」を開所した
「できる人が、できる時に、できるだけ」をモットーに月に1~2回程度の頻度でイベント等を開催。親が中心となり、当事者、教員、市民活動家、学生、地域関係者など幅広い方々の協力で成り立っている。
拠点の立ち上げ
拠点探しのきっかけは活動場所が公共施設中心だったことで、2つの課題があったからだ。当事者の中には初めての場所や人混みが苦手な人がいること。地域の人たちを活動に巻き込みづらいことだった。
法人設立から6年目に多くの協力者・支援者と共にDIYを行い、2020年2月にシェアリングハウス「くるみのおうち」を開所した。コロナ禍もあり、様々な苦労と試行錯誤を重ねながら活動を継続、現在は週末を中心に活動し、大切な居場所になっている。
「くるみのおうち」立ち上げ
青年部のくるみのおうちでの活動:お好み焼きとゲームの会
新しい展開
今年は、障害や特性のある本人同士で意見を出し合い、計画して一部の親がスタッフとして付き添い、みなとみらいで観光を楽しんだり、鉄道会社の職員向けの障がい者雇用のセミナー講演を行ったり。地域の福祉まつりに出展し地域との交流も行った。家族問題などの相談、支援にも柔軟に対応している。
昨年から今年にかけて、太田さん自身も長年勤めた会社を退職し転機を迎えた。在職中に3年間通信制の大学に通い社会福祉士を取得。今春から地域包括支援センターのセンター長として地元で働きながら、息子さんのケア、くるみの活動を続けている。
取材を終えて
「たとえ、空気が読めなくたって、自分らしく生きればいいじゃないか。くるみの活動を通して今もこれからも当事者も親も仲間と一緒に自分たちらしく活動することを大切にいきたい。」と夢を明るく語る太田さんの姿が印象に残った。くるみの活動自体が太田さんの生き方と重なり、熱く語る姿に私自身も刺激もらい、すがすがしい気持ちになった。
(うえだ ゆうこ)
流しそうめん
バスハイク
主な活動
<ライフスキル事業>
野外体験活動(お餅つき、ドラム缶ピザづくり等)、くるみ青年部(本人主体の活動を支援)
<インクルーシヴ事業>
誰でも参加できる場づくり(マルシェ出店、くるみカフェ)
<情報提供事業>
おやじの会
<普及啓発事業>
障害理解を深める映画上映、研修・後援等
Facebook:https://www.facebook.com/kuruminaoto.org
